けども、その方法にも問題はある。
無論、誰でもが応募できる状態(資格者や実績が問われる)なのは安全ラインの確保として致し方ないことだとは思うが、短い応募期間で提出した案が、確実に問題なく完成できるものとして責任を問われるのは困る。そんな簡単に建築はできない。設計作業というのは多くのトライアンドエラーを繰り返しシミュレーションするものだ。同じものを繰り返し作るわけでもない限り、初案ですべての問題に応えるのはできない。しかも、無償で。多くのコンペは無償である。アイデアをタダで提供する危険性はある。
コンペやプロポってのは「挑戦」をすべきものであり、そこのリスクは当然あるものなのだが、設計者の置かれる状態が危険なものも多い。そのため、リスクを減らす応募方法も確立されてくる。一度応募した案を、他のコンペに応募するのだ(発展改良させて)。当然のことかもしれないけれど、別の敷地に建ち、別のプログラムであるコンペに、以前応募した案を流用するのもいかがなものか?いやしかし、かなりのエネルギーを費やした案が落選したときの行き場のない状態(金銭的にも)もいかんともしがたい。
ルールや仕組みというのはないといけないのかもしれないけれど、発注者と設計者の関係性があってこそのルールだと思う。選ばれた設計者の選ばれた理由、選ばれた案の秀でた理由、そういった本質的な部分を共有して、建築プログラムを良い方向に取り組む体制が必要だ。
何か問題が起きた時に、設計者はいつでも危険にさらされる。建築のリスクは多い。いかにそれを解決しながら、それでもなお、前に進まないといけない。エネルギーがいる仕事だ。
コンペやプロポーザルの唯一の可能性は開かれた場所であること。それだけは歪めてはいけない。